変形性膝関節症の治療について

変形性膝関節症は膝の関節の軟骨がすり減って膝の痛みと動かしにくさを生じる疾患で、主に加齢によって生じます。我が国の変形性膝関節症の患者数は推計で2500万人にも上ると言われています(Yoshimura N. J Bone Miner Metab. 2009)。このうち症状のある人は780万人程度と見積もられており、高齢になるほど痛みと変形が高度になる傾向がありますが、その重症度は人によって様々です。
一般に、クリニックでは運動療法、鎮痛剤による薬物療法、関節内ヒアルロン酸注射などの治療が行われ、進行してしまった場合は病院に紹介されて手術をすすめられることが多いです。
しかし、中には手術をするほどの重症度ではない人や、心臓や肺に持病があるために手術のリスクがとても高い人、家庭の事情で長期間の入院ができない人もいます。また、手術はどうしても体への負担(侵襲)が大きく、心理的に抵抗を感じる場合も多いかもしれません。
このように、クリニックでの保存的治療と手術治療との間には大きな隔たりがあり、当院ではこの間を埋める治療の選択肢も多く提供して、個々の患者様に最適な治療を選択するように心がけております。

変形性膝関節症に対する幅広い治療選択肢

治療選択肢

上の図は、変形性膝関節症の重症度による治療の違いのイメージを表したものです。
変形性膝関節症が進行するに従い、レントゲン写真では関節の隙間(関節裂隙といいます)が狭くなり、多くの人でO脚の変形が顕著になります。
実際には、治療法はレントゲン写真の重症度によってのみ決まるものではなく、個々の患者さんの症状、生活スタイル、治療に対する希望などを聞いて治療選択肢を提案し、医師と患者さんとの間で相談して決めていくことになります。当院では、関節疾患に対する長年にわたる豊富な治療経験をもとに幅広い治療選択肢を用意しております。変形性膝関節症の症状でお困りの患者さまは、一度、整形外科外来を受診してご相談していただければと思います。

保存的治療

症状、画像所見が比較的軽度な場合は、リハビリテーション、大腿四頭筋訓練によるホームエクササイズ、鎮痛剤の内服・外用、減量、関節内ヒアルロン酸注射、装具療法などの保存的治療の対象となります。
これらの治療は近隣の整形外科クリニックに依頼しております。お近くのクリニックに宛てた紹介状を作成いたします。

保存的治療

手術療法(人工膝関節置換術)

軟骨の摩耗が進行し、十分な保存的治療によっても疼痛の改善が得られない場合は人工膝関節置換術の対象となります。
関節の表面は本来、関節軟骨というクッションで覆われていますが、軟骨が摩耗・消失してしまった関節の表面を金属や高分子素材で置き換える治療で、疼痛の改善と変形の矯正が期待できます。
標準の入院期間は19日程度ですが、ご高齢の方や筋力低下が進行している方はリハビリに日数を要しますのでリハビリ専門の病院に転院してリハビリを長期間行います。
変形が軽度な患者さんには、膝関節の一部のみを置換する人工膝関節単顆置換術(UKA)を行います。人工膝関節単顆置換術(UKA)は通常の人工膝関節全置換術(TKA)よりも低侵襲で早期の回復が期待できます。

手術療法

当院ではCTの画像データによる3D術前計画およびコンピューター支援手術(Computer Assisted Surgery: CAS)を行っており、正確で誤りのない手術手技を心がけています。

手術療法

患者さんの年齢、膝関節の変形の程度、活動性によっては骨切り術という膝関節の周囲の骨を切ることで変形を矯正する手術方法を提案させていただく場合があります。自分の関節を温存して強い負荷にも耐えられるという利点がありますが、当院では行っておりませんので、ご希望があれば専門施設にご紹介いたします。

再生医療

再生医療とは、患者さん自身の細胞・組織を用いて、失われた組織や臓器を修復・再生する医療のことを指します。変形性膝関節症に対して、当院では患者さん自身の血液から組織修復に有効な成分を取り出して膝関節内に注射するPRP(Platelet Rich Plasma: 多血小板血漿)療法が可能です。スポーツ選手の怪我を早く治す方法としても行われている安全性の高い治療です。
一般に”再生医療”と呼ばれることが多いですが、残念ながらこの治療のみで消失した関節軟骨が蘇ることはありません。しかし、疼痛軽減効果はヒアルロン酸注射などの従来の保存療法よりも高いことが知られています。
保険適用外の治療となりますので、治療にかかる費用はすべて自費となります。

治療の流れ

  1. 患者さんの腕から血液を採取します。
  2. 採取した血液を遠心分離して血小板の豊富な成分を取り出して保存します。
  3. 後日来院していただき、保存しておいた成分を膝関節に注射します。

再生医療

治験薬

厚生労働省から新薬の承認を得るために、患者さんの協力のもと行われる臨床試験のことを治験といいます。国立病院機構では治験を通して新しい医薬品・治療法の開発に取り組み、国民の皆様に画期的な新医薬品の迅速な提供をできるように努めております。
変形性膝関節症に対する新薬の治験実施期間中には、治験のご説明をさせていただく場合があります。参加は患者さんの自由意志になりますので、あくまで治療の一つの選択肢として検討していただきたく思います。ただし、治験にはその試験ごとに細かく設定された基準を満たす患者さんのみしか参加することはできませんので、参加を希望されたすべての患者さんが対象となるわけではないことはご了承ください。
治験には、画期的な新医薬品による治療が受けられる、治験参加中は検査などの費用が一部軽減される、といったメリットがあります。一方、好ましくない作用(副作用)が出る場合がある、治験参加中は色々と守らなければならない注意事項があり、生活に制限が出てくることがある、といったデメリットもあります。

末梢神経ラジオ波焼灼療法

変形性膝関節症に対して2023年6月より保険診療が可能となった新しい治療法です。ラジオ波(高周波)によって膝周囲の末梢神経に熱を加えて焼灼することで疼痛を軽減させる治療で、リハビリテーション、鎮痛剤の使用、ヒアルロン酸注射などの保存療法を十分に行っても膝関節痛が続いている患者さんが対象となります。
メスを使わず、局所麻酔で短時間に行うことができる低侵襲な治療として注目されています。
治療を行う医師には資格が必要で、限られた施設でのみ実施可能です。
治療の有効率は、疼痛が術前の半分以下になった場合を有効と判定した場合、6~7割程度であることが知られています。すべての人に効果が保証されるものではありませんが、何らかの理由で大きな手術が受けられない患者さんにはよい選択肢となります。

末梢神経ラジオ波焼灼療法

  • 人工関節の手術を行うほどの重症度ではないが痛みが強い
  • 人工関節を行うにはまだ若いと言われている
  • 高齢であるため、あるいは併存疾患があるために人工関節の手術リスクが高い
  • 人工関節の手術をすすめられているが仕事や家庭の事情により長期間の入院が難しい
  • 手術は希望しないが痛みを何とかしたい

このような患者さんは従来の治療法では症状の改善が困難でしたが、新しく登場した末梢神経ラジオ波焼灼療法が有効な治療となる可能性があります。

治療の流れ

末梢神経ラジオ波焼灼療法治療の流れ

1.外来にてテストブロック
少量の局所麻酔薬を試験的に末梢神経周囲に注射し、効果を確認します。

  • 疼痛が軽減した場合:
    末梢神経焼灼療法が有効である可能性が高く、治療を行う対象となります。
  • 疼痛が軽減しなかった場合:
    末梢神経焼灼療法の効果が得られにくいと考えられますので、他の治療を考慮します。

2.治療当日

  • 手術室で超音波診断装置(エコー)を用いてターゲットとなる神経を探します。
  • ラジオ波焼灼装置の針を刺す部分に局所麻酔を行います。
  • ラジオ波焼灼装置の針から高周波を流し、ターゲットとなる神経を焼灼します。
  • 1部位あたり、2分30秒高周波を流します。この治療を2~3部位実施します。
  • 約20分~40分で終了となります。

治療の当日に入院し、問題なければ治療翌日に退院となります。(1泊2日)

整形外科外来受診は予約優先となります。ご予約のない場合は診察できない場合もございます。
末梢神経ラジオ波焼灼療法をご希望の方は、お近くのクリニック・病院で当院あての紹介状を作成していただき、受診ご希望日の2日前までに下記連絡先へお電話下さい。
外来予約センター:042-742-8317(電話受付時間 8時30分~16時30分)