腰椎椎間板ヘルニアとは
どのような病気ですか?
椎間板は人間の背骨にあり、骨と骨のあいだでクッションの役割をしています。背骨は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)に分けられ、その骨と骨の間の全てに椎間板が存在します。
椎間板に負担がかかり、椎間板内部にある髄核という組織が外に飛び出して神経にぶつかった状態が椎間板ヘルニアです。
神経がダメージを受けると腰や下肢の痛みや力が入らないといった神経症状が出現します。
診断にはどのような検査が必要ですか?
経過、症状、身体診察とレントゲンやMRI検査などで診断をします。椎間板ヘルニアの診断にはMRI検査が必須となりますが、MRIでは見えにくい小さいヘルニアでも強い痛みを引き起こしたりすることもあるため、MRIでも診断が難しい場合は造影剤を使った検査や、診断の目的でブロック注射などを行う場合もあります。
症状はどのようなものがありますか?
代表的な症状は坐骨神経痛といわれる、お尻から太もも、足首にかけて痛みと痺れです。何番目の腰椎に椎間板ヘルニアが発生しているかで、痛みがでる場所も変わってきますが、頻度が一番多いのはお尻や太ももの裏の痛みです。その他にも足に力が入りにくさ、陰部や肛門の痺れや尿や便の出しにくさの症状がでる人もいます。
手術以外の治療方法はありますか?
椎間板ヘルニアでは、椎間板や脱出した髄核が神経に当たってしまい、神経に炎症が起こっていることが痛みの原因です。根本的に神経に当たっている髄核を摘出するには手術以外はありませんが、神経の炎症を抑えて痛みを軽快させる方法として抗炎症薬やステロイドの内服や注射といった方法があります。リハビリや内服薬、ブロック注射などをまず行い、それでも痛みが軽快しない場合には手術を検討します。
自然に治ることは期待できませんか?
椎間板ヘルニアは、痛みが強く生活に影響を与えることがありますが、50~80%は手術をしなくても痛みは改善するとする報告があります。ヘルニアの種類にもよりますが基本的には数カ月で自然に吸収され消失することが多いと報告されています。
椎間板ヘルニアの治療は、手術が第一選択ではありません。患部の安静や内服薬、ブロック注射などの保存治療と言われている方法で痛みがなくなることも十分に期待できます。
しかし、足に力が入らなくなってしまった場合や、尿や便が出ない場合は早急に手術を行わないと、永続的に症状が残存してしまうことがありますのですぐに病院を受診して下さい。
内視鏡手術はどのようなものですか?
内視鏡手術は近年、医療機器の技術の発達に伴い増加している手術方法で、日本では年間で約2万件行われていますが、一方でまだ全国的に行える医療施設が限られている術式です。
昔は脊椎の手術は非常に危険で「手術をすると足が動かなくなる」など、恐怖心を抱えている患者様の声をいまだによくお聞きします。実際、脊椎手術はほかの整形外科の手術と比較すると技術的に高度で、リスクが高いのは事実ですが、近年の脊椎手術で術後にそのような悪い経過を辿る患者さんは非常に稀です。
特に脊椎内視鏡手術は、高性能のカメラの画像を4Kの大きなモニターで見ながら手術を行えるため非常に安全性が高く、昔のように視野の悪いなかで術者の手や手術機材を体内に入れることはないため感染リスクも低く、筋肉など周囲組織を損傷も最小限でヘルニアの摘出を行うことができます。
現在、日本国内では「MED」、「FESS」、「UBE」と大きく3種類の脊椎内視鏡手術の方法があります。
当院では、オーソドックスで日本で最も多く行われている「MED」と、最先端で最も傷の小さい内視鏡手術である「UBE」の2種類の内視鏡手術を行うことができます。
手術翌日から歩行可能で手術後は3-5日ほどで退院することができます。
①MED(Micro Endoscopic Disectomy)
②UBE(Unilateral Biportal Endoscopy)
手術方法にはどのようなものがありますか?
痛みが非常に強い場合や、数カ月間の保存治療を行っても痛みが改善しない場合には手術を選択します。手術の一番のメリットは、痛みを引き起こしている原因を直接取り除くことができるため、痛みを早くとることができます。しかし、当然一定の確率で合併症が起こるリスクもあるため、医師と相談して方針を決めることになります。
手術方法は基本的には背中側からヘルニアを取る手術を行います。手術方法は顕微鏡、拡大鏡、内視鏡を使った手術など色々ありますが、何度も繰り返す場合は金属を挿入して背骨を固定する手術が必要となることもあります。
内視鏡手術で対応できない症例はありますか?
当院では、腰椎椎間板ヘルニアの症例は100%内視鏡手術で対応しております。施設によっては症例を選んで内視鏡手術を行っている病院もありますが、当院では基本的にヘルニアの部位によって内視鏡で対応できないということはありません。一方、同部位の再発したヘルニアは内視鏡で対応できる症例とできない症例があります。
原因は何が考えられますか?
椎間板ヘルニアの原因は一つではありません。今までに報告されているものとして、20~40歳代の男性、重労働者、車の運転、喫煙などが腰椎椎間板ヘルニアになりやすい原因として指摘されています。複数の要因が合わさって発症することが多いです。
当センターの特徴と治療実績
当センターでは特に脊椎内視鏡を中心とした脊椎低侵襲手術に力を入れており、2023年度の脊椎手術件数は347件で、そのうち脊椎内視鏡手術は288件でした。
他の病院で内視鏡で対応できない症例でしたり、固定術など大きな手術を提案された患者さんであっても当院であれば内視鏡手術で対応できる可能性もあります。
日本全国から多くの患者さんにご来院頂いており、現在は脊椎内視鏡手術に関しては神奈川県内でトップレベル、日本全国でも有数の手術件数を誇っております。最小限の身体への負担で最大限の効果が得られるよう、常に最先端の手術技術の探求と向上に努めております。
腰椎椎間板ヘルニアは、若年者や仕事を休めない患者様も多く、可能な限り組織のダメージが小さく、早期社会復帰のできる内視鏡手術のメリットは大きいため、当センターでは2021年度は初発の腰椎椎間板ヘルニアは全例100% (75例中75例)内視鏡手術で対応しております。