禁忌と回避(医療関係者の皆様へ):誘発試験の方法(専門医向け) [2/5]

負荷試験を安全に、かつ正確に行うために

被験者の条件として、発作安定期であることはもちろん、安全に施行するためには当日の1秒率が70%以上あることが原則である。ただし、どうしても1秒率が70%をこえない重症患者の場合は、2〜3日間ステロイドを内服をさせても(アスピリン過敏性は変わらないため)かまわない。検査に少なくとも2〜3時間以上要するため、中等症以上の患者では、その間に肺機能が自然低下しやすい。それをさけるために、普段から使用している抗喘息薬を、次の項で述べる薬剤以外は、無理に中止しなくてもよい。これは中止に伴う疑陽性を防ぐためと、安全に検査を施行するためであるが、米国でもっとも負荷試験を行っているStevensonらのグループも同様の考えである。本負荷試験の目的は、NSAIDの過敏性の有無を安全に確実に診断することであり、NSAID閾値を正確に知るためではない。また気管支拡張薬の内服程度ではNSAID過敏性はほとんど影響を受けないこともその理由である。

さらに安全に施行するためには、以下に述べる負荷試験法の手順、特に負荷量と負荷間隔を守ることも大切である。これらは多くの経験から考えられた安全かつ確実な手順であり、この方法に準ずれば危険なことは決してない。負荷試験の判定は一秒量が20%以上低下した場合を陽性とするわけであるが、10〜20%の低下の場合は、次の負荷量に増量しないで、しばらく経過をみたり、再度同量を負荷することがよい。

負荷試験に影響する薬剤

負荷試験当日のβ刺激薬やクロモリン吸入は誘発反応を抑制するため、当日朝は使用できない。抗コリン薬吸入も同様に中止したほうが良い。ロイコトリエン受容体拮抗薬も24時間以上中止する。抗ヒスタミン薬はほとんど影響しないが、全身症状(顔面紅潮など)を抑制する可能性があり、可能ならば24時間以上中止する。継続中の内服ステロイドは、むしろ当日朝も内服させたほうが安全に施行できる。吸入ステロイドについては、その影響について単独で検討された成績はない。多くの患者は吸入ステロイドを継続していると思われるが、患者の状態にあわせて、可能ならば中止する。

AIAはアスピリン過敏反応のあと、数日間はNSAID全般に交叉耐性が生じる。すなわち検査後2〜7日間不応期が続くため、連続して検査は行えない。さらに注意すべき点は、一回目のNSAID負荷が明かな陽性反応でなくても耐性が生じえるため、続けてNSAID負荷を行う場合は、陽性の場合は7日間以上、陰性でもできれば4日以上間隔をあけることが望ましい。