禁忌と回避(医療関係者の皆様へ):誘発試験の方法(専門医向け) [5/5]

表1 アスピリン内服負荷方法(Single blind法)

負荷時刻/日 1日 2日 3日
AM9:00 placebo ASA15mg ASA120mg
AM11:30 placebo ASA30mg ASA240mg
PM2:00 placebo ASA60mg (ASA480mg)

ASA:アスピリン、FEV1は30分ごとに測定
ASA最終負荷量(480mg)は省略可、陽性判定基準は表2参照

表2 NSAID全身負荷試験 ー陽性の判定基準ー

  1. 1秒量が基準値の20%以上低下した場合
  2. 1秒量が基準値の15%以上低下、ならびに気管支以外の症状(鼻閉、顔面紅潮、結膜充血など)が出現した場合
  3. 1秒量は低下しないものの、他の症状(鼻、消化器、皮膚症状、胸痛、咳など)が明らかに出現し、負荷量の増量とともに、その症状の悪化を認めた場合

注)(1)(2)(3)のいずれかを満たした場合、陽性と判断し検査を中止する。

表3 スルピリン、トルメチンナトリウム、リジンーアスピリン吸入負荷試験実施手順

  1. 吸入液の調整:使用直前に生理食塩水に溶解し、以下の濃度溶液をつくる。
    1. スルピリン:1、10、100、(250)mg/ml
    2. トルメチンナトリウム:0.05、0.5、5.0、50mg/ml
    3. リジンーアスピリン:0.10、0.33、0.99、3.3%(アスピリン濃度として)
  2. 吸入装置:デビルビスモデルNo.646ネブライザーを用いて圧搾空気5L/分でエロゾルを発生させる。
  3. 吸入手順
    1. 1秒量を測定し基準1秒量とする。
    2. 生理食塩水を3分間吸入させ、1秒量が10%以上低下しないことを確認する。10%以上低下した場合には非特異的刺激による反応が現れやすいと考えて検査を中止し、後日再検する。
    3. 最低濃度の負荷液を3分間吸入させ、(5〜10)、(20)、30分後に1秒量を測定する。
    4. 20%以上低下した場合は陽性と判断する。10〜20%の低下を示した場合は次の吸入に移らず、40、50分後に1秒量を再検する。そこでも20%未満の低下であれば同じ吸入濃度を再度負荷する。
    5. 1秒量の低下パターンや自他覚症状も判定の参考にする。
  4. 負荷試験の問題
    AIAではNSAID負荷後に不応期が2〜7日生じる。そのため連続して行う場合は、陽性の場合7日以上、陰性でも4日以上あけることが望ましい。

表4 NSAID過敏診断のための各種負荷試験とおのおのの特徴

  経路 負荷
試験
検査
時間
感度 特異性 簡便性 安全性 負荷薬
の入手
全身 内服 アスピリン 3日間 ×
静注 リジンーアスピリン 3〜5時間 ×
局所 気管支吸入 スルピリン 2〜4時間 ○〜△ ○〜△ ◎〜○
トリメチンナトリウム 3〜5時間
リジンーアスピリン 3〜5時間
鼻腔 アスピリン 2〜4時間 × ×
リジンーアスピリン 2〜4時間 × ×

◎:優れる、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
※:リジンーアスピリンは試薬としてのみ入手可能なため、静注薬として用いることはできない